ラノベの特殊性

tdaidoujiさんのところから

帰るべき故郷(現実感のある現実ってやつ)を喪失してるのがデフォルトだから、といった話に繋げるとイマドキのライトノベルの話にまで行くのかな。

多くの作品が故郷の喪失を描いているという話だと、それはラノベに特有の現象とは思わないです。自身を欠損することで主人公たりえるのは、古今東西のファンタジー・神話・物語のお約束。身体を欠損することで神性を獲得する片輪の系譜とか、故郷や親を失う主人公の系譜とか、貴種流離譚とか。
違いがあるといえば、主人公が故郷を喪失する理由の正当さをとうとうと描くところ。源氏もゲドも指輪も、主人公の先代・先々代に遡り主人公の正統性を描く。
ラノベでは"喪失"が日常化し、"受難"がコモディティ化している。でもそれは、お手軽に物語を始めているというだけだと思う。作者と読者との間に物語のツールのデータベースの共通了解があって、この記号のときはこの系譜の主人公だと同定できる。なので正統性とかいらない。
"受難"の"動物化"がラノベの特殊性といえばその通りなんだけど。ラノベが固有の物語構造を持っているかというと微妙。まーあえて言えば、正統性とか気にしなくていいので、カタルシスとか補償作用とか構わずにオチを反対にしたり主人公の救済とか考えなくてよかったりすることかな。