劇場版レヴュースタァライト  LIVE#2を交えた私的解題(ドラフト)

試し書き。3回目の鑑賞を前にした解釈の整理です。★はロロロ、あるいはLIVE#2への言及

項目

  • 0. トマトは何の象徴か、あるいは彼女たちの動機
  • 1. ななはなぜ皆殺しのレヴューを始めたのか
  • 2. ななは、純那とのレヴューで何を得て、次の舞台に向かうのか
  • 3. ひかりは、まひるとのレヴューで何を得て、華恋と対峙するのか
  • 4. 劇中で再生産した華恋はどこへ行くのか
  • 5. 真矢はクロディーヌとのレヴューで何を得るのか

0. トマトは何の象徴か、あるいは彼女たちの動機

トマトは、痩せた土地でこそ美味しく実る。飢えや渇きの中から瑞々しく実ったトマトは、舞台少女の結実そのものである。
トマトを齧る=スタァライトを燃料に次の舞台へ向かう決意

★LIVE2の劇中歌で以下が歌い上げられる。LIVE2での彼女たちの動機付けであり、劇場版にもつながる
・華恋はふたりのスタァライトを演じたことで満足している
・ひかりは、自分をあきらめようとしていたことを後悔している
・真矢は、自分に並び立つライバルが現れたことを喜ぶ一方で、「強さの陰に隠してきた弱さが胸に刺さる」と歌う
・自分が見えないという華恋をひかりは導こうとする
・アンサンブルでは、何度傷ついてもスタァを目指す決意を歌っている

1. ななはなぜ皆殺しのレヴューを始めたのか

舞台少女は古い自分を燃焼して新しく生まれ変わるもの。TV版でスタァライトの終わりの続きを始めた。
→ならば観客の望む新章の続きで、自分を燃焼し新しく生まれ変わらないといけない。さもなければ舞台少女は死を迎える。「スタァライト」が新しく生まれ変わることなく終わってしまう。
★ロロロで、ななは、舞台の外から「少女歌劇レヴュースタァライト」の再演を見、舞台少女が生まれ変わる様を確認した
★LIVE2は、新しいスタァライト、新しい舞台を目指す、舞台少女たちを描いていた。

第99回聖翔祭の運命の舞台で7人を捕えていたななだからこそ、舞台少女たちを新たに燃焼させるため、キリンの役割を代わって担おうとしたのだと解釈する。

劇中では、ななは、「わたしもけりをつけないと」と言っている。けりとは、再演を行っていたこと、その背後にあるのは、同級生たちを挫折などから守りたいと思っていることであり、その代表が純那だということ。

2. ななは、純那とのレヴューで何を得て、次の舞台に向かうのか

★LIVE2で、第100回聖翔祭の後のななの台詞「わたし、みんなと、9人でスタァライトできてよかった。またみんなとスタァライトやりたい」
★LIVE2の八雲先生は、煌めく舞台を創造することを楽しもうとしている。八雲はかつてスタァライトのオーディションで敗れた過去を持つことが示唆されている。第100回聖翔祭のスタァライトを見て、その煌めきを手に入れたいと考えているようである。あるいは自分を乗り越えて、彼女たちが次の舞台へ立つ煌めきを手に入れることを望んでいる。

ななは、進路相談で俳優か演出かどちらの道を選ぶか悩んでいると答える。ななもまた、八雲先生、キリンのように、新しい舞台、新しい舞台少女の創造に自らが関わることを望んでいる。

 

★LIVE2で、かつて舞台を一緒に作ろうとしていたが離れてしまった友人と対峙するななに対し、純那は「白く染められた過去ならば色をつければいい」と言う。その言葉で力づけられたななは、因縁に打ち勝つ。
→純那の言葉で未来に目を向けるななというLIVE2での構図は、自分への誓いの強度をななに追及され、傷つくことを恐れず自分をさらけ出す覚悟を決めた純那と鏡写しの関係になっていると考える

3. ひかりは、まひるとのレヴューで何を得て、華恋と対峙するのか

劇中で、ひかりが新章スタァライトの後に続く舞台(3つ目のロンド)から降り、華恋から逃げたことが示される。レヴューでそのことをまひるから問い詰められたひかりは怖かったと告白する。その内容は、華恋のファンとなってしまうこと、と後に華恋に告げている。自ら煌めくことができなくなることを恐れていると考える。

その後のまひるの言葉により、ひかりは、自らがスタァとなるのに十分な力量と煌めきも持ってなくても、不安を抱えながらでも、演じてもいい、と気づく。そして、次の舞台に立つために足りていないものを、華恋に直視させようとする。まひるがひかりにしてくれたのと同じように。

★LIVE2で、かつての友人との戦いで、自らの舞台少女の在り方に悩むまひるに対し、ひかりは夢に向かって突き進むために自分自身と戦うよう告げる。一緒の舞台に立ちたいという友人の声に動揺したまひるは上掛けを奪われる。友人と一緒の舞台に立つことを選んだまひるに対して、その過去ごと受け入れることをななや純那が告げ、まひるは聖翔に戻ることを決める。

劇場版では、華恋との絆を共有するひかりに対し、一緒に舞台に立ちたかったとまひるは告白する。

→LIVE2と劇場版で、ひかりとまひるの関係は裏返しになっていると解釈する。

TV版での華恋とのレヴューでまひるが再確認したのは、自らの煌めき、そして喜びと苦しみを抱えつつ舞台に立つことへの決意である。劇場版では、まひるがひかりに同じものを気づかせた。

4. 劇中で再生産した華恋はどこへ行くのか

ひかりの指摘に対し、スタァライトに代わって燃焼するものを見つけていないひかりは「舞台少女の死」を迎えてしまう。
自らの過去を燃焼し再生産する華恋。
★LIVE2では、過去の絆を胸に次の舞台を目指すことを、なな、まひるが決意している

そうして、東京タワーは2つに折れ、思い出の展望台は無数のポジションゼロをまき散らし、先端はかつての大きなポジションゼロに再び突き立った。

華恋のレヴュー衣装にはポジションゼロが刻まれ、「レヴュースタァライト」を演じ切ってしまったと独白する。次の舞台を待つ観客のために、スタートポジションに立つ華恋。

5. 真矢はクロディーヌとのレヴューで何を得るのか

劇中では、クロディーヌは「ファウスト」のメフィストを演じ、真矢を堕落させようとする。ファウストは「常に向上の努力をなす者」の代表である。戯曲「ファウスト」のラストは、メフィストの作るまやかしを信じて死ぬファウストを、かつての恋人の祈りで救済されることで終わる。
★LIVE2でクロディーヌの実力を引き出すため真矢はまやかしとして青嵐側についてクロディーヌと戦ってみせる。劇場版のレヴューはその再演であり、同時に真矢自身を知るための仕掛けでもある。

真矢は、ななや純那と同じように、自らの望む完璧からの欠落に蓋をし、不安を押し隠し、完璧な舞台少女であることを演じている。

それで結局真矢は何を手に入れたのかは、考え中。