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金沢散策

Uターンの旅の目的は、金沢と立山黒部アルペンルートサンダーバードで金沢に入り、まずはベタに兼六園に。
2ちゃんねるのスレでは残念な場所という感想が多かったので余り期待してなかったのだけど、いやいやどうして技巧の極みじゃないですか。桜の枝の広がりは他の木を邪魔することなく柔らかく張り伸ばされている。松の枝振りの大胆さが浮かないよう灯籠も流水も石も配置されている。1つの木の枝振りが面白いとか岩を何かになぞらえているというような局所的な意匠はどんな庭でも見られるのだけど、兼六園では近景から遠景まで通して美しい。どこを見ても絵になるだけでなく、歩くごとにころころを表情を変える。パタンランゲージの集成なんだろう。日本三名庭を冠するだけはある。園内にある成巽閣も素敵。
金沢城は多く改修中であり建築物に見るものはそれほどない。石垣の石がもはや緩んでいて反り返りの曲線もがたがたになっていて、かつて威容の名残に風情を感じる。
あと、印象深かったのは足軽資料館と尾山神社の間にあった「オヨヨ書林」という古本屋。白塗りの古びた木造の長屋で、明るい土間には絵本が、中には壁に据え付けの本棚いっぱいにアレゲな本が奇麗に並んでいる。スペースをゆったりと使っていて、窓からの採光と天井の電球とで、古本屋にありがちな辛気くささがない。商店街の紹介ページに写真があった。時間が止まっているのではなく緩やかに流れている。新宿のブルックリン・パーラーのもっと純度をあげたような感じ。本も精選されているのがよくわかる。ただ同じ本屋が東京にあってもここまで印象を強く持たなかったかもしれない。オヨヨさんは青山から金沢に引っ越したらしいけど。香林坊のおしゃれな街並、風情のある長町武家屋敷跡を通って、ハイカラな尾山神社への道すがら見つけたからなのかもしれない。町歩きが場所と場所をつなぎコンテクストあるいは地図を作る行為だとすると、金沢は素敵な町歩きができる街といっていいと思う。

有名なお寿司屋さんはさすがに予約一杯なので、いっちょネタにと「ひよこ」というビースフテーキ屋に行ってみる。駅近くから18番東部車庫行きで猿丸神社前で下車。食べログのレビューから想像した以上の店構えです。これはないわ。

レビューにもある通り、メニューはヒレステーキのみ。入店してカウンターに座ると、お冷やを出すやそれでは焼いていきますからね、となんとも見敵必殺な接客である。なすにタマネギにジャガイモにしいたけを鉄板焼きさながらに炙りつつ厚さ3センチはあるヒレ肉をごろごろと取り出す。これはステーキなのか? とスナックのような丸椅子に座りながら呆然とする。

しかし肉はうまい。なんでこんなに柔らかいのかと。レビューではオイルに浸けているとか書いていたっけ。といってシチューにようにほぐれるのでもなく。ご飯もパンも付いてないのだけど、これは構わないわ。

箸を数切れつけたところで、7人ほどの親子三代の家族連れが来店。40年ほど店通いをしてる近所の人らしい。店ができたのは47年前だとか。なんでも北海道旅行から帰ってきてこの味が忘れられなくて来たらしい。お店もっと大きくしなよというそのお客の声に、手伝いをしているおばちゃんが肉が入らなくてね、との返事。確かにこの料理でこの質を保つには客は数人しかさばけないか。
ところで、出身が明石で、という話をすると、店主が裏にある猿丸神社は明石にあるタルマル神社というのと関係があってね、という返答をしてくれた。タルマル神社というのは知らないけど、人丸神社というのが家の近所にある。猿丸神社は京都にもあって猿丸大夫を祀っている。人丸神社は柿本人麻呂を祀っている。柿本人麻呂猿丸大夫が同一人物という説があったなぁ。梅原猛か。