「予期される未来」

確かに、2ページしかないのに、ずしんとくる。
読んでて、デネットの「自由は進化する」を思い出した。1分後の未来が完全に決定されたとして、それが生涯にわたって未来が決定することの根拠にはならない。意思があれば自由は自ずと生まれるはずだ。でもわれわれは、この思考実験を笑い飛ばすことはできない。科学の意味での宇宙を前にすれば人はみな平等でその差に意味はないこと、その虚無に対する本能的な畏れが根源的に人の心にインプットされているんだろう。

インタビューや後にあるエッセイ「科学と魔法はどう違うか」を読むと、そのような虚無を前にいかに生きるかという実存的問題と、SFとファンタジーの橋渡しという手法上の問題との融合が、テッド・チャンの作品の一つの大きなテーマなんだろうと思う。