ささいな共感という幻想だけど

下にあるように、GW前から休暇をとってスペインへ行ってきました。

出発前にはアイスランドのEyjafjallajokull火山の噴火も収まり、あとの懸念はスペインの治安でした。大使館の出す安全情報を見ると、首絞め強盗やらスリやら毎日のように起きています。加えて、2ちゃんねるの海外旅行板のスペインスレにはスペイン人に差別主義者が多いといった書き込みも見受けらました。それらの情報からは、スペインの人たちに対してネガティブな姿しか思い描くことができませんでした。やはり民族主義というのは根強く、他国の人に対する想像力を持ちにくいのだろうか、と暗澹たる思いでスペインに旅立ったのでした。

実際、スペインで外を歩くのはストレスでした。中心街にあたるプエルタ・デル・ソルは渋谷のセンター街以上に雑然としていて、1日1回はガキが警官に補導もしくは注意されている姿を見ました。飲食店が多い通りだと、呼び込みの兄ちゃんや花売りのねーちゃんに必ず声をかけられます。私に出来ることは、お前ら近寄ってくるな光線を全身から発しながら早足に歩くことだけでした。

ただし、個々のスペインの人たちと接する限り、他のヨーロッパと同等に親切であるように感じました。国鉄の切符売り場のお姉さんは、一度買ったチケットをやっぱりキャンセルさせてくれというこちらの要求にもフレンドリーに応対してくれたし、宿泊してたところのホテルマンの一人にはちょっとした事故に色々手をつくしてくれたし、あと(観光客御用達でない)レストランの店員とかも。商売相手に愛想よくしているだけの可能性は大きいですが。ただ、相手も英語がしゃべれて意思疎通が出来ている限り、接していて不快感を感じたことはないです。逆に英語をしゃべれないスペインの人は、こちらがスペイン語を理解できないことを知ると、如実に不快感を露わにします。意思を通じ合える相手には丁寧で、通じ合えない相手には横柄になる、というのは我々の身近にも見られる話です。

スペインの人は、情け深いのかもしれない。ひとつ印象的だったことがあります。スペインの新幹線AVEで色んな都市に移動したのですが、その時何回か見たのが子供が乗り合わせていると周囲の乗客がみんな子供を可愛がりいじるという光景でした。日本でも年配の方が同じようにするのをたまに見るけど、スペインでは大人がよってたかって子供を可愛がっていました。その姿に、関西のおばちゃんみたいやなぁと思ったのでした(こう見えて大学まで関西でした)。スペイン人は関西人に似ている、そう考えると急に親近感が沸いてきました。関西弁で言うところの"いちびり"で"いきり"なスペイン人は、スペイン語も英語もできない"わや"な日本人がどうしよもなく見えるのかもしれません。自分が関西に居た頃、"じゃん"とかぬかす関東人に腹が立って仕方なかったように。

スペインもバスク地方とか民族問題は厳しいものがあります。身近な体験と照らし合わせて他の国のことを判った気になるのは、浅はかなのかもしれません。ただ、こうやって外の社会を理解していくしかないとも感じます。社会を成り立たせる自明の前提が崩れ、コミュニティが孤島のように散り散りになっている現代においては。情報だけではきっと互いを理解することはできないのだと思います。