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文化庁メディア芸術祭アニメ部門シンポジウム

10時に着いたのだけど、サマーウォーズ上映の整理券は瞬殺。こんなの初めてだよ。で、夕方に行われたシンポジウムに参加しました。講演者は、大賞『サマーウォーズ』の細田守監督、優秀賞『東京マグニチュード8.0』の橘正紀監督、アニメーション部門主査の鈴木伸一氏。久しぶりにメモがんばりました。

注意:以下は講演者の話を私が聞き取ってメモしたものです。講演者の意図を正確に反映していないおそれがあります。

鈴木
今年はアニメ部門473本。70%増。長編17本、テレビアニメ55本、OVA 58本、短編357本。
短編多い。パソコンで個人製作できるようになったし。

細田
SWは個人的のことから発想した作品だけど、みんなに受け容れてられてよかった。
前の作品が終わってから次回作でいろいろ変遷があった。その中で、自分が結婚して
これまで体験しなかったことを体験することができて、結婚て面白いなと感じて、
こういうのどうでしょうと話をして決まった。
マッドハウスの丸山さんから、いいかげんしろ、どうする気なんだと言われて
しぼりだしたところがあった。
結婚ってするまでは、自由を失うというか面倒くさいというイメージがあったけど
実際体験すると面白いこといっぱいあるなという感動からそれをどういう風に
アニメにしようかと。
結婚の実体験をアニメにした人ってあんまりいないと思う。日本のアニメ史8,90年
あるけど、結婚したとき親戚面白かったというのを題材にしたのはきっと日本初
だろう。少なくとも商業的には。
結婚式はジミ婚、10人くらいですませた。でも後になってもう一回やらなきゃいけない
羽目になった。ジミ婚にしたところで絶対もう一回やんなきゃいけないので、ハデ
にしておいた方がいいw
登場人物28人って多すぎて言われたけど、実際、見ている側や主人公が名前を覚え
きれないという感覚の方が実体験に近いんじゃないかと。自分も未だに奥さんの
親戚の人の名前全部言えない。

鈴木
映画の中では家長制度みたいになっていて、おばあさんを中心に裾野が広がっている。
今の家庭は核家族化、ばらばらになっている。大家族で集まっているというのは
今は少ない。それがとっても面白かった。日本的で。

細田
昔は正月やお盆にみんな集まって、というのが多かった。海外の人に聞いても同じよう
な感じ。その中で、時代と逆行するようなことになって、親戚が主人公の映画なんて
誰が見るんだという不安が常にあった。自分は面白いと思っているけど、みんなと
共有できるかどうか完成してもよくわからなかった。
ここで予告編を見てもらいましょうか。

(予告編上映)

鈴木
夏希と健二の関係は面白い。奥様は年上なの?

細田
主人公とヒロインの関係。ヒロインが1つ上というのも珍しい。
受けを狙うなら年下だろう。えと、妹萌え
でも年上もこうあまりヒロインになりにくいけど、高校のときって年上にあこがれるよね。
年上の女性って輝いて見える。でもアニメではそれほど描いていないのではないかと。
みんなに受け容れられる保証もないまま年上にしてみた。

鈴木
私も若いことは年上に憧れましたよ

細田
本当ですよねぇw

鈴木
なんかやっぱり年上というのは色気があってですねw

細田
いいですねぇw 先生、なんかこう、持っているボトルが焼酎の瓶に見えます

鈴木
サマーウォーズの話しないとw
夏希は健二をひっぱりまわす役、そのモデルは?

細田
モデルが奥さんなのか、とよく言われるけど、そうではない。
自分が高校のときの先輩がモデル。1こ上の先輩、コスギさんw
美しい人だったんですよw 本当にw
背筋が伸びていて、剣道やっていたんですよ。後輩に優しくて。
美術部と剣道部両方やっていた。自分も剣道部に入ったw
ほとんどそのまんま画面になっている

鈴木
前の時かけも、主人公が魅力的、気持ちをうまく書けている。
特に泣くシーン。

細田
ヒロインを描くときに、時かけでもそうだけど、素敵な部分をそのまま
描くのはなく、そうじゃないところ、ダメなところとか泣いてて鼻水
出しているところとかに出くわすとそれが甘酸っぱいというか可愛いな
と思うことが多い。可愛いでしょとやっているところは可愛いと思わない。
馬鹿っぽいとかせこいとかというところに魅力を感じる。

鈴木
橘さん聞きたいことあります?w


オリジナルの映画を細田さんが作ったのが気になる。経緯は?

細田
実は、オリジナルをやりたいというのは余り無い。面白い映画を作りたいだけ。
原作ありか原作なしかというだけ。
今回はアクション映画をやりたいと思っていた。アクションに適した原作
というものはない。なので作ろうかという経緯。


個人的な体験を乗っけていって企画を通すというところにうらやましいな
と思った。

細田
でもM8だって、個人的な、あるいは見ている人の実生活に沿っている作品に
なっている。何を言っているんですかと言いたいw
どちらも描いているモチーフの場所が近い。
なぜこういう話になっているかというと、自分も橘さんも東映アニメーション
出身。
橘さんは研修生の4期。研修生は、正社員でない雇用形態。
第1期に佐藤順一さんとか。自分はイレギュラーに入って2.5期。

鈴木
もともとアニメーションをやろうと思った動機は?

細田
やっぱり昔から好きだったというのと、絵とか作品を創る仕事に就きたかった
というのがあった。美大だったし作品創ってやってきたので、作品作りを
仕事として生活の一部にしたくて。


東映の学校(東映アニメーション研究所)に入って研修生になった。子供の頃
映画とか見ていて、ファンタジーのような物語を作ってみたいと思うように
なって。最初は実写映画を作りたいと思っていたけど、アニメを子供のとき
見るときが多くて。最初に映画を見てすごいなと思ったのはナウシカ
ちょっと怖くて。もやもやしてどうしてこういうものを映画にしたのだろうと
気になって、何度も見ているうちに好きになって。その時は意識していなかった
けど名探偵ホームズとか見て。

鈴木
細田監督は?

細田
ぼくらのときはアニメブームが。ヤマトが小学校低学年であって。あと
ガンダムガンプラを買いにデパートの開店から駆け込んで。

ガンダムは懐かしいというよりは、富野さんが当時あの作品を創った偉大さが
年々わかってくる。今でも古びていない。

そろそろ東京M8の作品の説明もしないとw


そもそもフジの松崎さんという方が地震の話をやりたいと。
作品の企画が動き出したときにボンズの南さんから話が来た。
これまでテレビシリーズの経験がなかったので、正直
本気で言っているのだろうかと思った。

細田
地震を描くとなると現場が大変だしね。


最初南さんから、街を壊すんだったらロボットを出していいか
と松崎さんに言ったけど却下されたw
きちんと書くということでどうすればいいのかと。
お台場から家まで帰宅するということになると、移動するので
歩くところ全部創らないといけないので大変。ストーリーはまだ
できていなかった。最初は、娘のいるお母さんが主人公だった。
シリーズ構成の高橋さんと考えていった。
最初はどういうルートで帰るかという話を。

でも大人の女性が自宅に帰るとなると、そこからドラマを創る
となると難しい。作為的になりそう。なので子供達の目線で
創ろうということになった。合流する保護者としてお母さんが
参加すると。

鈴木
姉弟が主人公だけど、弟の悠貴くんがとてもいい子。未来の
方はとげとげしくて。こういう性格設定も最初から?


思春期の子供にしようというのがあって。まだ世界が狭い子供。
世界に出て行くなかでどのように触れていくのかというのが
挑戦してみたいというテーマとしてあった

鈴木
M8.0というのは?


リアリティがあって大きな地震となると。阪神大震災で7.9。

細田
作品みると考証がすごい。下調べは大変だった?


作品創っている最中も調べものをずっとやっていた。
リアルな場所を描く、気持ちの流れを絵にしていかないと
いけないということで色んな人に本読みに参加してもらった。
こういう風に言ったらこう気持ちが流れるんじゃない、気持ちが
解れるんじゃないとか、台詞の細かいところを大勢集まって
稿を重ねた。
ロケハン、シナリオハンティングをよくやった。
写真を撮って、コンテに描いて、アングルが足りないとまた撮影
して。そういうことはあんまりなくて新鮮で。

細田
被害を受けた街並みの考証は?


阪神淡路大震災のときの映像を多く参考にした。実際にどういう
風に壊れたかというのに他に、脚本協力の村田さんが建築の勉強をされていて
柱がどういう風に壊れるか構造上の弱点みたいなのがあるんだよと教えてらって。

細田
村田さんって何者ですか?w


ギアスとかエウレカの演出をされていた。今ユニコーンの方に入っている。
雑学に詳しくて、トイレの話が出てきた時、トイレには水流式と吸込式が
あるという話をしてくれたり。

地震が起きたときの壊れ方で気をつけたことは、壊れ方のリアリズム。
地震が起きたときは弱いところがスコンと落ちて壊れる。資料を
渡したりして。

細田
それをテレビシリーズでやるには大変。監督がチェックできるものではない。


背景原図の修正のために、セクションを設けた。原図修正に美術監督
経験している方に3人ほど入ってもらった。

細田
あとモブ。モブ作監に荒川さんという巧い人を使っているし。
そもそも作品に出てくるモブの数がすごい。


モブが問題になるというのは最初からテーマとしてあった。
攻殻に参加していたのだけど、そこで使っていたシステムで
ロングの時に対応。アップのところは粘って書いて。
今回めっけものだったのは、3Dを頼んでいたスタジオで
モーションキャプチャが出来るようになったので、手付けで
なく芝居ができるようになった。現場がどんどん予想以上に
進化していった。

テレビシリーズ初めて監督することになって、現場をどう
コントロールするかというのが難しかった。あと作品のテーマ。
最初に主人公を中学生にしたのも。自分の経験から来たものがあった。
仕事するようになって家庭と疎遠になって、そういうのをテーマに
したかった。リアルな弟には喧嘩ばかりしていたので、弟をちゃんと
描きたかった。あと、家族と会いたいときにきっかけないと会わな
かったりするし。
作中で死を扱うことについてもナーバスになった。

最後未来が地震を乗り越えていかないということを描いたけど、見ている
人も同じときにどうするのか考えてもらえるとうれしい。

鈴木
視聴者からの反響は?


ずしっと来た、見ていてつらかったという声が多かった。
本当に地震が来たときにどうするかという問題提起が必要だと
思っていた。重いという感想は、視聴者が自分に重ねて見て
くれたのかなと。

鈴木
話をアニメ全体のことに振る。日本アニメの現状について


やはり第1に言われるのは、社会的保障がなく自転車操業になって
しまうこと。先が暗いという印象。

細田
さらに、不況の煽りを受けて、作品数自体が減っている。むしろ演出家がつらい。
辛い中で企画として考えていかないと。

鈴木
海外の制作会社への外注は?


増えている

鈴木
中国も制作会社が増えているし、お互いに利用できるようになれば。

細田
中国が自分の国の中で見てもらうためのアニメをどんどん作るように
なればと思う。この前、マクロスにとてもよく似た中国のアニメを
見たw 丁度サンライズで見ててどうしようと言う話をしていたけど、
自分は別にいいじゃんと思う。日本のアニメを作るのもいいけど、
自分の国の人のためにも作品を創って、そこで日本のアニメのいい
ところを持ってもらえたら。実写の映画はアジアでレベルがどんどん
上がっている。アニメも同じようになれば。

鈴木
前見たときはもろ日本のアニメだった

細田
自分が見たのはアメリカっぽかった。色んなものを取り入れているのでは?

鈴木
この前見たのは水墨画のがあった

細田
歴史から見れば、例えば水墨画は中国が起源。日本がそれをパクって作品を作った。
逆のことがあっても全然いいだろうと。

鈴木
CGに関してはいかがですか?


色んなアプローチ。ピクサーみたいにフルCGだったり、日本みたいに
作画とCGの融合だったり。作品のテーマや質に見合う技術なら取り入れれば。
作画が衰退するということではなく。

細田
最近思っているのは立体視の映画に対してどうするか。
手描きのアニメーションは立体視にならない。手で描くものを右目、左目
と描き分けることは無理。我々は手で描くことが魅力的だと思って作って、
見る人もそう考えていると思っているけど、映画の趨勢が3Dが主になったとき
どうするか。一つ方法があるとすると、3Dの絵にをトゥーンレンダリングかけて
手描き風にする。手描きだと無理。板に見える。今の方法では立体視に対応
できない。そこの岐路でどうするか。で、トゥーンでやっていきたいかという
としたくない。やっぱり手で描いているものを信じているから。手で
空とか森とか山とか目とか唇とか指先を描くことに意味があると思っているから。
でも、世界中の映画が3Dになって、日本のアニメだけが2Dでというわけには
いられない。

鈴木
でも、ピクサーの人が言っていたのは、一時3Dになったけど、
2Dも大事ということで復活させている。まあ、面白さが一番大事じゃないの?

細田
本当そう信じたい

鈴木
テレビが大画面化する中で差異化として映画が3Dしてきている。3D映像を
どう扱うかというのはメディア芸術祭でも話をしている。

以下開場から質問

Q. サマーウォーズは、デジモンのウォーゲームと似ているところが
あるなと思ったのだけど、どの程度意識されたのか?

A. 同じ人が作っているのだからまあ似たモチーフを使うこともある
でしょう。それに限らず例えば、三叉路、五叉路なんかも使っている。
そもそも、色んな作品から影響を受けたり、参考にすることはある。
サマーウォーズの場合、日本家屋をいかに美しく映すかで、黒澤明
「まぁだだよ」や「八月のラブソディ」を参考をしている。
よくネットとかで同じじゃないかという声もあるけど、同じモチーフを
熟成させていくというのもあるのでは。

Q. テレビシリーズと映画の違いは?
テレビは尺が長いのでエピソードを多く作れる。一方で次回につながる
引きを作らないといけない。1週間開く中で見るモチベーションを
どう維持するか。後、最終回の尺が短くて仕方ない。
一番テレビシリーズで強いのは、視聴者の声をフィードバックして
作品をよくできること。一発勝負でないところ。
映画は、三部作とか基本怒られる。完結しないといけない。2時間の
中で凝縮して体験するというのは、映画と出会って別れる。
映画ってビジネス的に大変。当たるかどうか保証がない。回収できるか
はわからない。一本一本が勝負。
テレビだとそこは緩い。映画ほどプレッシャーがない。

Q. 子供を描くとき気をつけていることは? 自分の子供の頃を思い
描いているのか、今の子供のことを考えて描いている?
やっぱり作品を創るときに一番重要なのは自分の経験。
受けようとウソのことやっても無理。自分の体験とか反映させないと
出来ない。たとえ女の子を描こうが自分の体験に基づく方が真実味を
持って描けると思う。
地震のことを描くのも、自分の体験と照らし合わせて共感できること
はちゃんと描ける。