二次創作のパレートの法則

初音ミク鏡音リン・レンの関係は興味深い。
ニコニコにアップされるオリジナル曲の多くは初音ミクだし、MikuMikuDance初音ミクがとりあげられている。素材がオープンであればそれだけコンテンツが多く作られる、という理屈から言えば、鏡音リン・レンもそれなりに取り上げられていいはず。単に昔からある、という以上に、初音ミクに集中しているように見える。
自身に代わって歌ったり踊ったりする役者として初音ミクが認知されたとき、同じことをしようとする人は初音ミクをまず用いる。表現する媒体の選択にもパレートの法則が適用される。あるいはもっとシビアかもしれない。二次創作市場売り上げ全体のうち95%が、5%の元ネタで占められているということは十分考えられる。

二次創作の現場では、参加者はクリエータであると同時に消費者でもある。この点で二次創作は一般的な口コミとは異なる。二次創作においてコンテンツは消費物ではない。素材に同じ意味を見出す者同士がそれを媒介としてコミュニケーションを行う。コンテンツは言語なのです。より効率的に意思疎通を行うには、同じ言葉を使った方がいい。消費物を選択する場合以上に二次創作では多様性は必要としない。むしろ二次創作は、同じ祖型を持つキャラクタを順次とっかえながら同じ表現が繰り返される、というエコシステムで成り立っている。無口萌えだと綾波から長門みたいに。二次創作では、素材はミームを載せる船の役割を果たしている。いや、一次創作でもそういうところはあるけれども、二次創作ではシミュラークルのデータベースとのマッチングが作品の価値をほとんど決定する。ミームの伝染力が市場の規模を決定する。コンテンツをCCにしたからといって売れるわけではないんですよね。ミームとの適合率が高く、かつ他の選択肢と比べて優位でなければ二次創作可能にしても伝播しない。

おもしろさは誰のものか:「コピーされ、2次創作されてこそ売れる時代」――伊藤穣一氏に聞く著作権のこれから (1/2) - ITmedia ニュース