「裏切りの闇で眠れ」

ストイックさもセンチメンタルさもなく、ただマフィアの内部抗争を描いている。といって銃撃戦ばかりやっているわけではなく、ボスは愛人のためにナイル河ツアーに行こうかと言ってみたりクラブの新人の味見をしてみたり、あるいは主人公の相棒が結婚相手の浮気にブチ切れてみたり、なんかぐちゃぐちゃなのである。
とはいえ、登場人物が即物的だったり欲望に忠実なだけでなく、なんらかの信念や美意識を持って生きている。その底にはヨーロッパの裏社会の複雑さと不安定さ(アラブ系が幅を利かせていたり、ロシアン・マフィアの圧力があったり)が通奏低音のように流れている。
説明もなにもないので最初の方はよくわからないのだけど、登場人物がわかってきて力関係が見えてくると、そんなさまざまなレベルの欲望が結びついてきて俄然面白くなってくる。ストーリーはシンプルだけどプロットがしっかりしているので弛むこともない。
初日の初回に見たのだけど、映画館を出るとぴあの調査員に作品の内容を聞かれた。いきなり聞かれても冷静に採点なんてできないって。そのときは100点満点で70点、5段階評価でストーリーと俳優は5、音楽と演出とあと何かを4と答えました。今思ってもそう外れてないかな。無駄もないしミスもない作品だったと思います。キャストはとてもよかったし。ただ80点台はつけにくいなぁ。