アニメと実写の差異 新作映画『真・女立喰列伝』を語りながら


アニメと実写の差異 2007/09/02

外に出すの初めて
初号が先週の木曜

制作の経緯は?
立喰師の外伝で。コミックリュウで。
それを押井さんが気に入って。
SFジャパンの創刊号のDVDにつけたい。
そこで急遽、登場人物の紅一点を取り上げた外伝として「女立喰師列伝」を作った。
大野編集長200万まで出す
実際には450万かかった?
意外に中身がまじになっちゃって。もっとエンターテイメントしたいなと思って。
公表だったかどうかはともかく、ぼくは面白かった。
で、そのオムニバス映画を作ることになった。
去年の秋に、シルバー仮面の初号試写にもぐりこんで、
Geneonの人にロビーで話をすると、大ファンの森さんという人に話をしたら
いいですよ、と言われ、話をしたらちゃんと食いついてきたw

企画を立ち上げるのは大体こういうもの
何かことを始めるのは誰かが蛮勇を奮わないとすすまないし。
つまり、立喰師のスピンオフのスピンオフ。
内容は6本のオムニバス。最初と最後が押井さん。

(ここで予告篇を見た)

他の4人の監督をどう選んだ?

周りで実写系の若い監督が集まってきて関わるようになってきて。
撮る機会を増やそうと思って、彼らに話をした。
そのとき、「とりたい作品のプロットと女優さんをセットで持ってきて」と。
女優をいかに美しくとるかが前提としてあった。あと立喰でないといけない。
自分がとりたい映画をとるための方便でいいから。
予算は1/6で均等に。
神山さんは最後。

辻本監督
10何年ガンアンドアクションのコンテストの審査員をやっている
そこ出身の監督。
5,6年前大阪で働いてたけど
キラーズという作品、あとVシネマ時代劇
ガンアクションをとらせれば日本一と思っている。

湯浅監督
ぴあ系のコンテンスと何度も入賞している。
映像の撮影の腕を評価している。
押井がとったのにも撮影、編集で参加している。
この前脚本の賞。
畑ばっかり取っている。子供と老人。昆虫、爬虫類系。
やらしい映画になっている。

神谷監督
樋口真一の助監督をずっとやってきて。
ガメラシリーズとかで。最近は日本沈没
特撮監督になるつもりない?
とてもアイドル好き。
たぶん小倉優子をとりたかったんだろう。
立喰しの話としては最も正当。

神山監督
最後誰にするかもめた。
押井さんが、神山がいいと推薦。
実写で1本とらせたかった。
撮ることで彼のアニメーションが変わるだろうと。
精霊のバルサを演じているひとで撮りたい、と
一番話の筋が通った。
神山本人が店長を演じている。
丸坊主にすると思っていたら、そうじゃなかったけど。
アニメの現場から一人抜擢したかった。

で、神山監督
精霊の守り人が一番いそがしいとき。
11月ごろに撮ると思っていたら、11月に公開。
よく聞かなかった俺も悪いけど、話してくれなかった押井さんも悪いよ。
テレビシリーズをとっているところで。映画、実写ができるか。
編集で週3日は必ずつぶれる。ほとんど時間がない。
結果、土曜と日曜の夜に。
いつも作品を撮る根拠が自分にあるか考える。前のとき神山店長として出演している。
いつもひどい想いもするけど、その倍にいい想いもする。
攻殻で忙しいときに、店長の役で。
あとで聞かされたのは、「あれはうる星のメガネだ」と。確かに目立っていた。
会う人会う人ににやっと笑われた。映画をみてやっと知った。
神山店長のその後で、ということならコミットできるかなと思って
プロットを出したら通った。
実写は初めて。
自主制作もアニメを撮っていた。
8ミリをかついで遊んではいた。作品として撮ったことはなかった。

感触は?
アニメの方法論と変わらない積りで撮った。
そんなに違和感はなかった。作業としては楽しかった。

押井さんの自分のパートの紹介
「金魚姫」
女優さん(ひし美ゆり子)と会って、そのとき話をした。30年以上ファンだった。
アンヌ隊員好きだったけど。その後フリーになられた作品も好きだった。
30年前に経っている女性が何をしているか、というのでプロットを。
30年経ったひし美を脱がせたいという一身で作った。
必死で説得した。
もともと刺青が大好き。タトゥーじゃなくて。
「ケンタッキー」
一番強引な作品かもしれない。SFを1本いれるべきだと思った。
かねて撮りたいと思っていた女優さんだった。
手足も細くて。
甲冑が似合いそうw
なんども企画を作ってきて、4回目でようやく撮れた。
撮影したのは3日。大島で。あとはCG。
霧がめちゃめちゃひどくて半日待った。
コクピットは他の作品で使ったものを再回収。
お金がなかったらなかったで知恵と勇気で作る。

神山さんの押井作品への印象は?
ひなこさんの奴は、なるほどなと。
ひし美さんのはかなり驚く。アニメでも脱がさなかったのに、こんな映画を
撮っていいのかとどきどきした。
最近になって押井さんは目覚めたという話は聞いていたけど。
あの現場でどういう表情していたのか、と想像するだけで面白い。
監督とカメラさんとメイクさんと4人で撮った。

押井監督:
これからああいう(裸や体)をがんがん撮ると思う。
ようやく色気づいた。覚悟ができた。これからどんなのを撮るにしても必ず出すぞ。

押井さんから神山さんの作品を見て:
アニメと実写で変わることはないしその必要がない
変わる部分は、存在感。そこが大きなモチベーションになる。
監督の方法論としてはいつもやっている方法でやるしかない。
本としては一番よくでてくる。さすが。
神山監督の作品はいつも全部みないとわからない。
SACや精霊も。
正統すぎるぐらいの映画
たまには変化球を入れてもいいだろうと思うぐらい。
手堅い。役者をきっちり撮ろうと。
こういうドラマをやりたかったのかというのは最初意外だった。
あとで分かった。
神山監督の意外な面がわかった。そばに見ているのではわからない新しい面だった。

神山監督の、監督だけだったらつらかった、というのについては?
出たかったわけではなく。
その後を描くというのが。映画を作るとき、脚本から考えるのがやりやすい。
最初他の人にやらせようかと思っていた。
俳優さん探す時間がなかった。押井さんとも話して、ぎりぎり悩んで。
それで成立するアイデアを思いついたので、出ようと思った。

押井監督:
なかなかいい方法だと思った。

神山監督:
プレッシャーとしては攻殻や守り人よりはあった。
前の日に、カット割りができない、という夢を見たぐらい。
なんで楽だったかというと、誤解を生みそうだけど、
カメラの向こうにいるとき、もう一度見せてください、という言い訳。
わかんないのをごまかして。
同時に俳優をコントロールする半分は、アニメのセルと同じで
自分をコントロールするとやれば一番やりやすい。
自分の体を素材として使うことで気を使わない。そこが楽だった。
偶然性をアニメはほとんど拾えない。
実写だと拾える。
そんなには撮り直さなかった。
アニメもコントロール不能な、思ったとおりに上がってこない素材を
思ったものに見せるには3方法ぐらいある。
それを考えると、実写はすぐやりなおしできるし、アドリブもあるし、
一気に幅が広がった。
そんなに悩む必要がなかったというのがわかった。

手堅くということだったが?
それは長所でもあるし弱点でもあると自覚している。
破綻とか欠落が映画というところもある。
短編だときっちり出来てしまうだろう、というのが事前に想定できてしまった。

他の監督作品は?
実写における絵作りは、自分にはない部分。
撮影監督にある程度お願いしてた。
押井さん、影がBlackにする。実写でもアニメでも。
自分はそこまでやらない。
押井さん一貫しているなと思った。
他の人も、意識した色をだしているな。自分はそれを確立できてない。

アニメにおけるレイアウトと実写の絵つくりは?

押井さん:同じだと思う。
宮崎さんのように、書いたときの気持ちよさを狙っている場合は違うけど、
アニメが映るものとして撮るなら同じ。

映像の情報量にはどう気を使う?
自分が撮りたいとこしか撮らない。あとはみんな湯浅にとってもらう。
アニメの現場でも同じことやっている。
あるテーマがあって、作品の中であるシーケンス、きもになるところを
自分で決める。そのために監督が撮る。それ以外は人の作った絵で仕事する。
アニメでやってたことを実写ではもっと徹底的にやっている。
女優をとるときしかやってない。編集も他の人にやってもらった。
アニメのときは立ち会っている。進行を把握してないと困るので

「カットはなんでも繋がる」と言ってたけど。
ないものはない、あるものしかない。
カットがアップか引きか、とかその場で撮っている人しかわからない。
あらかじめどういう絵か決まってないと撮れない。だいたいカメラの位置も決まっている。
アニメでやらなければならないことを実写でどれだけ端折れるかという考え方
でやっている。
そこにあるものをどう組み合わせるかが実写の醍醐味。

実写の方がスタッフとは付き合いやすい。
人も少ないし。ある程度無茶が通る社会だし。
同じ意識で向き合っていることが受け容れられる。

以下に最小限の関わりで映画を作るかが、今回のテーマだった。
カメラの横に立ったのは計5日間。

アニメーションと実写の手法の違い、神山さんは?
基本的に一緒
アニメは省エネできない。
実写はドキュメントというのはよくわかる。
黒澤監督のも、若いのは作りこみが激しい。徐々にドキュメントタッチになっている。
とりあえず行ってみて、あとは任せるというのも、撮れる可能性がある。

アニメでは参照でコントロールしていかないととれない。
実写の方がハンディ。
フィジカルはつかうけど精神的につかれないのが実写。
アニメではそこまで体力がもたないんじゃないかと。

最近押井さんのことがわかってきた。
昔はさぼっているなーと思っていた。

押井:
監督が関わる密度によって映画の密度もあがるというのは間違い。
スカイクロラも少ない。

神山:
もうちょっと居たほうがいいと思うけどw

押井:
日本映画がつまらないのは、
本当にとりたいところを予め決められない。
大作になるほどとるところが決まっている。

アニメはそれは少し自由
時間、空間。
しかし、制作規模と予算でクオリティがきまってしまう

役職に特化したプロでないとありえないのがアニメ
実写ではプロと素人、なんでもあり。
実際、立喰のスタッフほとんどが作品に出ている。

アニメーションは継続性と積み重ねでしか成り立たない。

神山さんは、押井さん的なスタンスは魅力的と感じた?
感じた。
アニメは長いので、実写はそこまでかからないので。
イメージしたものが具体的にするレスポンスのよさはある。
アニメの10倍ぐらい
可能ならまた撮ってみたい。

押井さん:
昔はアニメと実写交互にやるのが理想だと思っていた。
実際に難しいのがわかった。スパンが違う。
アニメの長編は2,3年に1本は作ることにした。

ン年ぶりに立ち上げるとかとても大変
そうすると、アニメやりながら実写やるしかない。
映画を作り続けることに決めた。