さすが涼元さん

ナハトイェーガー ~菩提樹荘の闇狩姫~ (GA文庫)

ナハトイェーガー ~菩提樹荘の闇狩姫~ (GA文庫)

上手いなぁ。
読みやすい文章で短く書けている。第1幕を堪能してふとページ数みたら1/3ぐらいしか行ってないのには素でびっくりした。奈須きのこだったらこの5倍はページ数使うだろうよ。
そして奇を衒った文体を使わずに場面転換つーかペース変更できるのがまたいい。すらすら書いているように見えるけど、なかなかこうはいかんよ。
キャラ配置は類型化しているけど、ディテールがちゃんとキャラ造形に繋がっている。奏なんかは、フランクだけど実は相当なお嬢様で才色兼備というベタな設定なのに全然嫌みじゃない。あと乱心しまくる弓道部部長も好き。エピソードとエピソードの間をつなぐ何気ないシーンがちゃんとキャラ造形につながっている。基本的なことだけど、きちんとやってくれているとやはり嬉しい。
あとは何と言っても、博覧強記なネタの出し方と、幕間的なコメディリリーフなパート。AIRのSummer篇を思い出す。第1幕のデパートご視察のシーンは、べたべたなネタだけど全然飽きない。
強いて弱点をあげると、蘊蓄ネタも舞台設定も十分あるのになんかケレン味が少ない。あと、器用貧乏というと失礼かもしれないがこの作者なら信じられるみたいな独自の切り口みたいなのがちょっと見えにくい。百合やら耽美やらもスパイス程度にしかなってない。他の人の感想で「何をやりたいか分からない」というのが多かったけど、それもむべなるかな。一点突破ではなく全体小説的なものはどうしても限界あるなぁという気もする。
とはいえ、個人的にはすごく気に入りました。後書きで書いているのと同じ言葉を、一読者として引用しておこう。「責任とってね♪」