魔法先生ネギま!17巻 がスゴイ

16巻については、"Something Orange"の海燕さんが気合の入ったレビューを書いていて、まったくその通りだと思っていたんだけど、17巻、とくに「157時間目 正義は何処に!?」と「158時間目/誰もが未来を背負っている!」はさらに上を言っている。


いちおうネタばれ回避スペース。






魔力によって瞬間的な過去や未来に跳べる航時機をともに持つネギと超の戦いはもしかしたらマンガでしか表現できないかもしれない。この戦闘のアイデア、過去にもあるのかもしれないけど、私はやられました。

それ以上に、未来をよい方向に改変しようとする超と戦う理由がなくて迷うネギと夕映のやり取りにはやられた。

夕映「もはや……自身が正しいと思い込むことなどで……これ以上……一歩も先へ進めるハズはないのです!!」

は、多くの少年漫画あるいはゲームが拠り所としてきた、「強い想いがあれば願いがかなう(何をやっても許される)」という大原則へのカウンターになっている。それに対するネギの答えもすごい。

ネギ「超さんは止めるべきです でもそれと同時に僕は……僕は僕達自身の日常のために悪を行う それを逃れることはできないのだと」

ここに至って、たとえばFateの士郎のちっぽけな正義は吹き飛んでしまう。「日常のために悪を行う」ことを、純文学やミステリーは日常の中の異物として描いてきた。作品の中でそれは避けられないことであり悲しいことであった。ネギまは、サービス要素満載のファンタジーな世界の中で、日常への回帰の結果として、より肯定的により確信的にその事実を描いている。こんなの、赤松さんしか描こうと思わなかっただろうし、赤松さんにしか描けないだろう。たぶんこれまであらゆる文学や映画が描けなかった境地に到達しているとさえ思うのです。