新しいコンテンツアクセスにおける配信基盤の技術課題

インターネット映像配信ビジネスの課題として、配信基盤と報酬系をあげた。アンビエンスを満たす配信基盤実現のための技術課題をいくつかあげる。本当はちゃんとあげて議論したいんだけど。

ネットワーク

新しいコンテンツアクセスでは、ロングテールにおいてヘッドの領域にある(集中アクセスのある)コンテンツもテールの領域にある(ニッチな)コンテンツにも同じように即座に提供しないといけない。既存の配信方式はそれぞれ次のように問題がある。

  • ユニキャスト:サーバに集中アクセスがあったときに膨大なトラフィックが発生する
  • マルチキャスト:ニッチなコンテンツに対して採算がとれない。すべてのコンテンツに対して経路設定をするのは難しい。またドメイン越えが困難である
  • P2P: キャッシュや経路探索などノードへの負荷が大きい。帯域に応じた経路設定が困難。急な集中アクセスにすぐには対応できない。急なユーザの入退場に対応できない。
  • Overlayネットワーク:急な集中アクセスにすぐには対応できない。急なユーザの入退場に対応できない。

ソーシャルメディアと連動し、ユーザの帯域とアクセスの規模に応じてコンテンツのありかの情報(BitTorrentでいうtracker)を動的に作るP2PとOverlayネットワークの間の技術が必要なのであろう。

符号化技術

・再生遅延
復調してすぐに表示できるアナログテレビと違って、デジタルビデオ信号は受信してもすぐには再生できない。動画像の符号化では、前の時刻のフレームと今のフレームとは非常に似通っている特徴を用いて符号化する。動いている領域はその動きの情報を用いて符号化する。先頭のフレームではこの方法が使えないので、後のフレームと比べて符号量が大きくなる。またシーンが変わると直後のフレームでは多くの符号量が必要となる。最初にある程度データを貯めてから再生を開始すれば、フレーム毎の符号量のゆらぎを吸収できる。Windows Media Player 9では最初に再生するまで2秒ほど待たされる。逆に、伝送帯域が十分でない環境で受信したデータを即座に再生しても、符号量の多いフレームが来るたび、再生がカクカクと止まることになる。
・適応的な品質の変換
今やケータイから車中まであらゆる地点でインターネット接続環境が存在する。現在は、各環境ごとに最適なビットレートの符号化データを準備するアプローチがとられている。しかし、Webとテレビが近づいている今の流れがさらに進めば、さまざまなWebサービスが動画を扱うことになる。サービス毎に最適なコンテンツの数も品質も変わるはずである。一旦復号してビットレートや解像度を落として再符号化することで対応は可能である。しかし、再符号化には時間がかかる。サービスが成立するのに十分な数のコンテンツを処理するのはほとんどの場合不可能である。