インターネット映像配信ビジネスの課題

これまでの内容をまとめると、ネット側から見たときのテレビの状況は次の通りである。

  • 魅力あるコンテンツ制作(高臨場感、編成):影響力を失っている。完全になくなることはないがこれまでのように視聴者の注意を独占することはない。
  • 情報の信頼性:影響力を失っている。信頼性は視聴者が自ら選ぶ形になる。場面によっては担保する仕組みが必要。
  • コンテンツ制作者との関係:テレビ局の収益性はゆらぎつつあるものの、報酬、技術環境整備など不透明な要素が多い。
  • 配信技術:ソーシャルメディアの力により、インターネットでも瞬間的に100万人単位の視聴者へのリーチが可能である。
  • ライフスタイル:影響力を失っている。視聴者は情報収集と同様にコンテンツ視聴を行う。
  • 広告: 広告主も既存のテレビCMが影響力を失っているのを認知している。現在評価尺度を検討中。2008年以降には変動が目に見えて現れるか。

放送事業者は、マスを対象とし大きな権益を得る代わりに公共性を本義の一つに掲げている。一方で、視聴者が望むニッチな面白さをカバーすることは出来ない。インターネット映像配信ビジネスにおいて、放送事業者が独占することは難しく、マス向け/ニッチ向けのバランスを考慮した複数の配信事業者が存在することになる。

インターネット映像配信において今後サービス規模を左右する項目は次の2つである。

  • 配信技術:100万人の視聴は、テレビの視聴率に換算すると2%程度である。現行の配信技術では1000万人レベルの配信はコスト的に不可能である。配信技術および広告のターゲッティング技術のブレイクスルーが必要である。
  • コンテンツ権利問題、コンテンツ制作者への報酬:映像制作者が多くの人に見てもらうことを目的に制作したコンテンツを、そのままインターネットでユーザが視聴するように切り刻んだり加工するのは難しい。新しくコンテンツを制作する、そのような利用も含めた形で制作者に報酬を与える、いずれの場合にもコンテンツ制作者への報酬が問題になる。伝播投資貨幣(PICSY)ファンドなどさまざまな形が検討されている。ニッチな価値のコンテクストを取り込むような貨幣を確立する必要がある。