exposureからengagemementへ移行するマーケッティング

Web技術がユーザの嗜好傾向を即座に捉え、容易にコンテンツ編成を行い得ることは上に述べた。CMにおけるターゲッティングが年齢・性別・住所に基づくアバウトなものだったのに対し、Web技術に基づくターゲッティングは直前のユーザの行動まで考慮した精確なものである。特に特定商品のプロモーションなどユーザの欲求に直接訴える高関与型のマーケティングでは高い効果が期待できる。
一方で、ブランディングや消費者のライフスタイルに関わる低関与形のマーケティングでは、望みの情報を探して視聴するインターネットよりながら見をするテレビの方が適していると言われている。しかし、現在CMによるブランド想起の効果そのものが低下している。視聴者のリテラシーは、テレビCMを押し付けがましいと考えるまでに変化している。
広告主は、インターネットには確固たる広告効果指標がないため今すぐインターネットに多くの広告費を割り当てるのが難しいとしている。しかし、多くの人が指摘するように、インターネットにおいて個人の視聴動向はむしろ計測できすぎるほどである。
Ad Innovatorで有名な織田浩一氏による「広告効果測定の認識に関する 欧米の現状」に詳しく述べられている。現在、オンラインマーケティングはROIを示すことが可能になっており、さらにほぼリアルタイムの指標を使ってROIをさらに向上させている。マス広告においても同種のことが実現できないかすでに検討されている。アメリカでは全米広告主協会などを中心に、視聴者の関わり度合い(engagement)を考慮した広告効果指標を作る試みMI4 (Measurement Intuitive: Advertisers, Agencies, Media and Researchers)が2005年7月から始まっている。2006年初頭からはP&G、SC Johnson, Pfizerらが5000世帯、11000人を対象に、消費者の広告接触から購買までのデータを1年間収集するProject Apolloが進められている。
テレビCMの優位性が崩れているという話は、J. Jaffeの「テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き出したマーケティング2.0」に詳しい。