へうげもの 1、2

漢字で書くと瓢軽者。信長の使い番で茶人の古田織部のお話。

人から借りて読んだんですが面白い。すげー面白い。
信長をはじめとする武人の、数寄ものっぷりを示そうとする甲冑姿は楽しいし、安土城以下装飾の素っ頓狂っぷり、茶器の存在感もしっかりと伝わってくる。秀吉像は斬新に感じたし、信長は実に瓢げている。千宗易が彼らと渡り合うだけの怪人っぷりをちゃんと見せつけている。

これだけキャラを立てながら、同時に本能寺の変の謎に切れ込む歴史解釈ものになっている。離れ業ですよ。すげー。

例えば。池上版「信長」でようやっと出た8巻を読んで、「え? 安土城ってこれだけ?」なんて思ったものです。あるいは、久秀が爆死する回、曰わくの平蜘蛛が出てくるがその絵を見てもふーんなんて思ったし。そこにあるのは史実の複写であり、美術館の展示品だった。

劇画はみんなマジメだった。池上版「信長」にしても、他の作品にしても、描かれる武人が持っているのは信念だけだ。信長は剽げない。ただ、フリーマンとかなんかそんな類のものを守ろうとする。自分の存在意義のみを気にかけている。権威の反骨として傾いてみせている。

へうげもの」で登場人物たちが見せる欲望は、ずっと俗物的で刹那的なんですよね。だからこそその背後に横たわる虚無を感じることができる。他の戦国ものを思い返すに登場人物同士のやりとりはのほほんとしている。牧歌的。「へうげもの」のそれは、緊張感が漂っている。剽げた信長との対面であっても、茶室での対面であっても。それがちゃんと積み重なって本能寺の変に至っている。

戦国ものにおいて、小説ならともかく、マンガでこういうのを読んだのは、私は初めてでした。つーか、早く3巻が読みたいんじゃー。