モバイル社会シンポジウム2006 - 未来心理研究会について

ケータイのコミュニケーションで、絵文字のような形で、身体性が立ち返り現れる、という指摘にはなるほどと思った。新メディアによって身体性が別の形で現れる、というのはキットラーの本でも繰り返し描かれていたことでした。

メールに早く返事されると脈ありと思うなんて記事がこの前あったけど、来たメールにはすぐ返事しないといけないと強迫観念を感じたり、誤読されないよう文面にすごく気をつけるらしい。なんか可哀想ですよ。これって監視社会とかに通じているんじゃないか。友人が信用できない。互いが互いを監視しているよう。
以下はメモ。
*注意:以下は私が見聞きしたことを勝手に書き取ったものです。


未来心理研究会のねらい〜モバイル社会における身体・コミュニケーション・空間 / 鈴木謙介

モバイル社会とは?
暫定的な定義:高度の可動性の高まった情報通信機器が、相互にネットワークを築くことで社会的インフラとなっている社会

ケータイというライフスタイル
ケータイがさまざまな形のコミュニケーションを統合してきた
電話の進化:固定電話→親子電話→携帯電話
他愛もないメッセージの交換:ポケベル→メール
交友情報:アドレス帳
他のメディア:ゲーム機、音楽プレイヤー、使い捨てカメラ

反射的コミュニケーション
反射的であることが率直さを意味する、即レスすることに意味がある
何かをしたいという意思そのものが価値がある
行為そのものがコミュニケーションとして意味を付与される

身体の脱埋め込み
コミュニケーションは接続しているが互いの身体は不在

非言語的な情報を排除することで、コミュニケーション自体が純化されたものとして、お互いの関係を繋いでいる。
「つながっている、なのにあなたはここにいない」というアンビバレンツさがコミュニケーションそのものを差異化、高価値化している。

電子的なコミュニケーション
疎遠、見慣れない 他人
親密、見慣れた 友達
疎遠、見慣れた Familiar Stranger: 都市でよくある
親密、見慣れない Intimate Stranger: メル友のような存在

他者への関心とメディアの関係
対面、知人 友達 全面的で親密な関心
対面、他人 Familiar Stranger 儀礼的無関心、不関与の規範
メディア 他人 Intimate Stranger 限定されているが特定領域への関心
 限定されたメディアでメッセージが差異化、強調される
知人 メディア Limited Friend 限定されているか親密な関心
 メディアでのやりとりはコミュニケーションが限定されている、趣味だったり、

友達、LF, ISの間を緩やかに移動している


複層的な関係性
一つの空間の中で、対面的なコミュニケーションと電子的なコミュニケーションが同居する。状況によるプライオリティが、場面に応じた選択の問題に変換される。
対面しているのにメールするなんて、なんて単純な問題ではない。
関係性の選択はアイデンティティをかけかえる昔からのコミュニケーションの形式と変わらない。

時間方向で切り離されていたのが、対面と電子的で多層化されることで同時におきることになる。

空間をコントロールする身体
ユビキタスコンピューター
空間であるデバイスにアクション→デバイス同士がネットワークで強調動作→空間から別のデバイスで働きかけ
人間の身体が空間に対するトリガーとして機能する
→ 身体が情報環境の一部に組み込まれながら、同時に身体そのものとしても存在しなければならない
監視社会:存在そのものが情報としてストックされていて行動を規定する社会

コミュニケーションー身体
身体の疎外ー再帰的な身体への要求(絵文字)

絵文字=空間の圧縮化
身体を落として記号として要求する

コミュニケーションー空間
コミュニケーションの複層化
寝る前に自分の部屋でメールのやりとり、同時に複数
・コスト 長い間他愛もない情報をやりとりするには通話よりメールの方が都合がいい
他の人とのコミュニケーションができなくなる
コミュニケーションが複数になるほど、そこがどこかという意味が前面化せざるをえない

身体ー空間
失われた身体が空間におけるメディアとして再編成

身体性が失われている、とか空間の意味とか、コミュニケーションの脱身体化とか言われるけど、失われているがゆえに再帰的な形で現前する


モバイル社会の未来
失われつつある再現前するものたちをどう扱うか
「モバイル」という、身体に非常に近いデバイスの社会環境への急速な埋め込み

日本:携帯に統合されたサービスが発達
海外:PCに統合されたサービスが発達


おまけ:次の日、鈴木氏をつかまえて質問しました。さすが宮台さんの弟子だ。しゃべるしゃべる。
Q. 再現前するとは?
A. 絵文字のような分断された身体性が立ち返り現れるということ。
Q. 確かにこれまでのコミュニケーションとは違う現象ですね。
A. どのように社会がなるかを考えることが重要
Q. Friend, Intimate.. らを使い分ける、というのもそれを研究することで、どのような
社会性を持っているのかがわかるということですね。複層化した社会性からPublicな
空間が生まれる?
A. そういうのを考えたい
Q. 東氏の情報社会論にあるインフラの話とは違うように思えたけど
A. 本質的には同じ。インフラにも色んな層がある。個別に考えないとわからない。インフラと別に考えたい。
Q. 環境型権力が管理する、というのとは違うんじゃないか。違う未来を描きたい?
A. そのへんは難しい。どうなるのかはわからない。技術は技術で別に考えないと。
Q. しかし、技術は利用法をあわせて考える方向に来ている。
A. 技術屋が上位層のことを考えてうまくいっている試しがない。
Q. まあ確かにWeb2.0とか空回りしているかも
A. インターネットはいつも空回りし続けているよね。止まらないように。