ミリオンダラーベイビー

前半は、唐突な出だしでいきなりボクシングしたいなんて言ってくるし、なんだかんだ言いながらさくさくとボクシング教えだすし、意外に凡庸な脚本だなーと思ってみていたのですが、あー、そういう話なのね。ミニマルにてcompleteな登場人物。自然主義的ではない前半のストーリーの切り出し方と、後半のシリアス部とのバランスはとても勉強になる。マギーの家族のベタな造形や、すちゃらかっぽい前半のボクシングサクセスストーリーなんかは2ちゃんだと絶対叩かれている。しかし、そこで風呂敷を広げすぎると、後半のシリアス部が散漫になってしまう。

ダイアログもあざとかったり説明的だったりするのに、キャラに重みが出てくるのは、振幅の大きさと、小道具の説明しない、という方法によるのかな。

なによりラストが秀逸すぎ。ジムで威勢がいいだけで同僚にぼこぼこにやられた男の一言が、クリントイーストウッド演じる男の救いを示唆している、という超絶技巧な演出。その前の牧師との対話がすごい効いている。こうやって後付けでキャラ造形しても深いドラマはできるんだ。まーこれもクリントイーストウッドの存在感のおかげかもしれん。彼が他の人物と相対すると画面の温度が明らかに上がるもんなー。