シナリオ

物語と情報処理の交叉点

ポストモダンの物語は、ブレイクダウン(理解の齟齬)が汎化される過程を記す。ミニマリズムやら家族やら思い出といったモチーフ、あるいはエピファニーや間テクスト性といったツール、どれもブレイクダウンを抽象化したり中心化したり原因に帰着させること…

「ぼくらが物語で遊ぶ未来」の先にあるもの−解釈の偶有性とインプロビゼーション

モダンジャズ、とくにフリーセッションは、少なくとも自分の場合他の音楽とは違う聴き方をしている。次にどう演奏するか予測しながら聴くのだ。自分の演奏体験とコードとリズムの経過に基づき予測した旋律を、実際の演奏と比べる。ある程度予想した通りだっ…

ライトノベル三大奇書とは - はてなキーワード

電撃小説大賞が最初電撃ゲーム小説大賞と呼ばれていたように、ゲームをプレイしているような体験を読み手に与えるのがラノベの一つの王道だと思う。一方、「ドグラマグラ」も「虚無への供物」も、世界を俯瞰するという読み手の特権的な地位を嘲笑い揺り動か…

ラノベの特殊性

tdaidoujiさんのところから 帰るべき故郷(現実感のある現実ってやつ)を喪失してるのがデフォルトだから、といった話に繋げるとイマドキのライトノベルの話にまで行くのかな。 多くの作品が故郷の喪失を描いているという話だと、それはラノベに特有の現象と…

物語を駆動させるためのデザインその2

全体を10分割する。 序 (3/10) closedなスペースから始める パーソナルスペースの構築 世界を把握するものさし・I/Oの設定 謎による物語の駆動 現状(1/10)、目的(1/10)、手段(1/10) 破 (3/10) 境界の外にある人・物の導入 解決の端緒 I/Oの拡張=インタラク…

物語を駆動させるためのデザインその1

2ヶ月前、短編を書く機会があり、小説の構造がどうあるべきかを考えたことがあった。これはそれをまとめたものである。啓蒙ではなく、指南でもなく、ただ自分の方法論を定式化したものであり、他者の作品になんら働きかけるものではない。 結論についてはそ…

老兵がどう老兵かというと

メモあるいは反面教師として。 Letter from Yochomachi経由。日経で蓮実重彦氏がサッカーについて語っている。 ジーコ監督には興味がない。監督経験のない人物を連れてきて、どうのこうの言うのは 意味がない。うまくやっているのかも知れないが、監督になっ…

SF"なら"何ができるか

SFにできることとして、柳下氏は「フィクションによる癒し」をあげていた。過去の記憶を呼び起こし、読書体験を書き換える。それじゃ、ファンタジーとSFの違いは何なんだろう。セカイ系とウルフ作品の違いは何なんだろう。 強いて「SFなら何ができるか」を…

デス博士トークショーレポ

2/15に紹介したジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語 (未来の文学)』刊行記念トークショー。そもそも「SFに何ができるか」という演題は、国書の人が勝手につけたものだったらしいぞ。ネタは、 作品内の謎と小説の面白さの違い カソリック小説としてのウ…

普遍的シンボルの話 id:paraselene:20060205 - behind the counterへレス

たぶん,宏方さんは「普遍」を主観的な意味で使っていますね? そうですね、はい。中にいる人にとって「普遍」的という意味です。で、境界にいる人たちが自分の「普遍」を共有する、というステップにきているという話です。乗り越えがテンプレ化している。世…

周縁について

サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は、そして20世紀のアメリカの小説(純文学・SF・ミステリー)は「ライ麦畑から落ちた」者たちを描いていた。 実際、文学はずっと周縁に焦点をあてていた。大江健三郎は、自身の文章創作の本で、周縁につ…

ミネルヴァの小さな梟

差異は意味の断絶を生み、意味の断絶は謎として取り上げられ、観測者は謎に惹きつけられる。謎というコンテンツが、複数のコンテクストを生む。意味の断絶というイベントに対し、受け手は自ら物語を創り出していく。差異が解消され安定に至るには、断絶が謎…

むしゃくしゃしたから貼る

第1回 ポプラ社小説大賞(〆切2006/03/31) 2000万に相当する幅の読者層。ハリポタみたいな作品か? しかし、「砂場」の設定とか最強厨設定とかを今更踏襲のはどうだろうとか考えてしまう。 「大人の本のさらなる展開」って何だろう。子供が大人になる作品か?…

無効化最強論

上記エントリーの「ニヒルの強要」から、相手の攻撃を無効化する技能を最強として扱う、ここ最近の傾向を連想した。誰がいるだろう。全然思い出せない。 ・耕平 (月詠) ・明日菜(ネギま!) ・伍長(パンプキン・シザーズ) うーん、型月作品にも誰か出てな…

電車男最終回

えー、最終回だけ観てますよ。ネットの先の有象無象の人たちは先鋭化されて描かれ、ネットやメディアが現実を侵食し、山田さんと青山さんは電車男とエルメスに転化し、そうして喪われる現実の襞はカタルシスとなってターゲットであるオタクを正当化する。ネ…

テクストとしてのツンデレ

BSマンガ夜話の「ポーの一族」の回に、ある視聴者からのFAXでこんなのがありました。「屋敷を離れ街を徘徊するエドガーとアランを吸血鬼だと知っているのは読み手だけである。他の登場人物が知らないことを知っているからこそ読み手はわくわくして先の展開を…

「よつばと!」と「あずまんが大王」の違い

よつばによって、あさぎ>ふうか>えな、なヒエラルキーが顕わにされるのがおもろい。ギャグマンガの主人公が持っていたトリックスター性を引き継いでいる。勿論「あずまんが」にトリックスターは存在しない。 「あずまんが」は身内との関わり、「よつばと」…

さよならジュピター

物語を動かす謎に対して、対抗勢力との争いとは別に、先史文明を設定しその関係を描くことで行動の正統性をつける、というのは昔のSFはみんなやっていたんだよなぁ、と再確認。歴史と政治の二軸に対して倫理性やら正義やらを描いている。 今では歴史にそのよ…

創作ノート

また10月まで忙しくなるので、ちゃっちゃと250line程度の短編を書いた。 オチのシーン主導というアプローチは、やはり話をまとめやすい。 ウェイトは後でもつけられる。 話のキモを間接的に語るために引用を使うということ。前のエピソードを引用=伏線、な…

BSアニメ夜話「劇場版エースをねらえ」

見たことはないんですが、宗方コーチの生き様は今見るとぐっとくるという唐沢先生の言葉や、アヴァンギャルドとも言うべき背景美術のすさまじさ、氷川先生の紹介した音声演出、など見所がたくさんあり、かなり興味そそられてます。で、個人的に一番がつんと…

「エウレカセブン」の構造

パトレイバーとかエヴァとかを経験した我々は、大きな物語と小さな物語とが地続きな世界を描かないと、今さら何を描いているんだ、ということになってしまう。しかしどうしても似た世界観しか作れない。 ボーイミーツガールが発端 主人公の家族は損なわれて…